2015年1月2日金曜日

[読書録] 『How Google Works』

Google のCEOが書いた名著。

実際の業務レベルでGoogleがどのように運営されているのか、具体的な事例も交えて書いてあったので、大変参考になった。
もう一度読みなおしたいと思えるほど勉強になり、すぐに実践したいと思える点が多かった。

とはいえ、なかなか読み返す時間もとれないので、あとで読み返すことを意図して、ここに気になって点を書き留めておきたい。


人材、労働環境、プロダクトへのこだわり


まず、全体的に見てキーワードとなりそうなポイント3つについて書きたい。

1.Google で採用するスマート・クリエイティブという優秀な人材


採用には圧倒的にこだわっている。
それもスマート・クリエイティブという人材にフォーカスしている。

スマート・クリエイティブとは、専門性とその経験値が高く、コンセプトを考えるだけでなく、すぐに実行に移してプロトタイプを作れる人材。

優秀だから高いパフォーマンスを出せるっていうのはもちろん、変化への適応性が高い。
もっと言えば、自らが世の中に変化を起こせるような人材にである。

普通の企業であれば、何か事業があり、そこへの必要なポストとしてそこに最適能力と人数の人材を適切なタイミングで採用する。
Googleでは、このスマート・クリエイティブがいれば、タイミングに関係なく採用するとのこと。

なぜなら、彼らは決まった事業に入れば求められた以上の仕事をこなすし、万一その事業がなくなったとしても他で活躍できたり、自ら新しい事業を立ち上げるポテンシャルがあるからである。

優秀な人材に面白い仕事をさせるために、会社を買収してポストをつくるくらい、人材にはこだわっている。


2.圧倒的に働きやすい環境


上記のようなスマート・クリエイティブは、仕事に対してエネルギッシュで、高いパフォーマンスを出す。
一方で、仕事に飽きてしまったらその場に留まることなく、もっと魅力的な場所を求める傾向が強い。

そんな彼らを留めるために、Googleは彼らが働きたいと思える環境を常に提供し続けている。

収入や労働環境という待遇面はもちろん、会社のルールとしても。

具体的な施策としては、
・トップダウンではなく、自由な発想が生まれるようなマネジメント
・一日の業務時間の20%を自由に使える20%ルール
・失敗が歓迎されるような企業文化

詳細は後述したい。


3.徹底的なプロダクトファースト


一般的に、セールスやマーケティングが重要と言われることもあるが、Googleはプロダクトを第一にしている。

売上を上げるためには、実際にセールスやマーケティングも重要であるが、そもそものプロダクトが魅力的でないとそれは一時的なもので終わってしまう。
何より、良いプロダクトは宣伝しなくても口コミで広がるし、良いことが伝われば売り上げにつながる。

そして、自分たち自身がサービスやプロダクトに対して、一番注文の多いテストユーザーである。
たとえば、自宅の設計図を何度も書き直す建築家のような性質をもっている。

また、プロダクトには、たんなる思いつきではなく、技術的アイディアがなければいけないという思想がある。


気になったポイント


その他、個人的に印象的だったポイントを挙げていく。

#社員の自発性を生み出す文化


問題を発見したら、週末でも構わずに働いて解決策を出してしまうようなもの。
それも、内発的動機付けに基づいて。


#何でも意見が言える文化を意図的につくる


能力主義を浸透させるには、異議を唱える義務が重んじられる文化である必要。
無口な人でも言えるように、任意ではなく、義務にする。

事業部ごとの独立採算にしない。なぜなら、部分最適が発生してしまうから。
あと、組織内で秘密文章は作らない。


#オフィスデザインは効率性だけでなく、人間関係も考慮して設計


オフィスデザインはその形によって、従業員を孤立させたり、地位を誇示させたりしうる。
スマートクリエイティブは、狭い場所に押し込み、交流を多くすることが大切である。
そこから、創造性のマグマが沸き上がる。


#人と働くこと自体に楽しさを、それがチームのパフォーマンスにもつながる


何かをやるには、よくあるお楽しみ企画よりも、本当の楽しさが大事。
同僚と一緒に働いたり、笑ったり、ジョークを言い合ったりする楽しさである。
だからこそ、わざわざ企画するときは、チームビルディングを目標にせず、思いっきり楽しむことを目標にする。

また、採用の段階でも納得できるユニークな基準がある。
それは、
・同じ空港で六時間足止めを食らったとき、一緒に過ごせる人か?
・午前三時にトイレでばったり会って、不快にならない人か?
といったものである。


#まずは小さな問題から取り組み始め、その後で大きく一般的なものにする


特定の分野に深い専門性をもったオタクが技術的アイディアの種となる。
また、小さい問題を具体的に解決する際に使った方法論が、全体に応用できる。


#多方面から大量に得られるビッグデータとその分析がこれからも重要な分野


大きな問題は情報の問題である。十分なデータとそれを処理する能力があれば、こんにち人類が直面するたいていの難題の解決策はみつかる。と、Googleは考えている。

問題をきちんと述べられれば、半分解けたようなもの 定量化の意義はまずここにある。
牛にセンサーを取り付けて、餌を与えるタイミングの最適化がよい例。


#効率的な会議に必要なこと


会議室にはプロジェクターが2台。
一つは常に、必要なデータを共有するためのもの。
基本的にはデータを元にした意思決定に使われるという。

オーナーを決め、その人が単一の意思決定者となり、オーガナイズもする。
議題は一日前にメールで送る。
議事録も二日以内に共有。
メンバーは8人以下が妥当。
時間管理はきっちり。
結論と行動計画をおさらいする。
会議中、内職は絶対にしないようにする。


#情報は基本的には共有して、会社全体の情報の流れを最適化する


取締役会で決まったことやそれに利用した資料も、法律上従業員に伝えられない事柄以外は、すべて社員に共有している。
それも、社内メンバーへの信頼がベースになっている。

また、社内のイントラネット上には、メンバー一人ひとりのOKGがある。
OKGとは、個人が決めて社内全体に共有しているもので、
objective 個人目標、key results 評価指標とその結果、からなる。
リーダーが部下に話しかけるときは、雑談よりも目標がどうなっているかを聞くことが多くなる。

そして、その際にはつらい真実でもリーダーに報告しやすい環境をつくる。


#自分のもとで働きたいと思うような上司であれ


事業は常に業務プロセスを上回るスピードで進化しなければならない。 カオスこそが理想の状況。その中で、業務を成し遂げる方法は人間関係。 意思決定を早くするための明確なヒエラルキーよりも大切。

そのために、リーダーは自分自身でしっかりと自己評価をする。

また、コンサートのチケットを無料で配ることで、会話のきっかけをつくったりもする。それもマネジメントの一つだとコンセンサスがとれている。

実際、メンバーとの人間関係を大切にしている。家族の名前とか、趣味とか、抱えている個人的な問題とか。最初の三週間はメンバーを知るだけに時間を使うくらいの勢いでリーダーは時間を使っている。

ユニークな点としては、社員一人一人に、自分の取り扱い説明書を書かせている。
特に、自分が壊れた場合の扱い方を書くように。
あと、上司がオフィスアワーを設けて、なんでも相談に乗るようにする。
これによって、余計な気遣いとかが生まれず、業務そのものに集中できるようになる。

それ以外にも、ホントに人に伝えるには、20回は繰り返していう必要があるという。
なぜなら、皆業務で忙しいから、それくらいいい続けないと伝わらなくなる。


#メールへの対応方法もスピーディーに無駄なく


メールの二度読みはただの時間の無駄。
すぐに処理するか、スターつけたりして明確に後程の対応にすべきかを決めるべき。


#スマート・クリエティブが働きやすい合理的なルール


ものごとを10倍スケールで考えると、スマートクリエイティブを繋ぎ止めるのに役立つ。
開発プロダクトを絞れば、それが会社の命運を決めると誰もが理解し、全員の姿勢が変わる。

「70:20:10 の法則」
メインプロダクト、成長プロダクト、発明段階のプロダクトの3つのパターンに分けてリソース分配を決める。

「20%ルール」
業務時間の20%を自分が好きなことに使える。
これは、専制的なマネージャーを牽制するという意図もある。


#ユーザーと顧客の利益が対立した場合、常にユーザーの側に立つ


サービスを使ってくれるユーザーと、実際にお金を払ってくれる顧客の利益が対立する場合も、ユーザーを優先する。

収益分析は後回しでも、ユーザーに焦点を絞ればあとは全部ついてくる。
ユーザーからの信頼は通貨と同じ価値がある。


#良い失敗をたくさんする


失敗か否かはデータで判断する。市場に出してみて、失敗と判断したものには追加投資をしない。
そのためにも、抗脆弱性なシステムがある組織である必要。
失敗や外的ショックにも耐えられ、それが知恵として組織の資産になる、そんな組織である。


#聞かれて嫌な質問を問い続けて、そのための対応策をとる


仮に、メインプロダクトに対して、懸念している特定の環境要因が起きた場合どうなるのか?
事前に考えておく必要がある。
変化が激しい今の世の中において、それも見越して対応しておく必要がある。