2016年5月1日日曜日

[読書録] 『振り切る勇気 メガネを変えるJINSの挑戦』

全体的な感想


メガネで有名なJINS田中社長の著書。

起業した経緯から、大ヒット商品JINS PCを発売するまでの話、ウェアラブルデバイスとしての今後の話などうまくまとまっていて、とても読みやすかった。

全体を通して、田中社長の等身大な人柄が伝わってきた。

学歴や実績とかではなく、ビジネスパートナーにとにかく真摯に想いを伝えたり、意思決定したことに対してフルコミットする姿勢を競争力としている点は、すごいなと思った。

この本を読んで学んだことは大きく分けて3つあった。


1.勝負の場面では、とにかく振り切ってしまう


JINS PC発売のCMを打つ際には、年間で1億円のマーケティング費用であったにもかかわらず、1ヶ月で5億円を投じるという大胆な意思決定をしている。

その本気度が、大量受注を生み、結果的にそのスケールメリットによって、生産側にYesと言わせたりしている点が秀逸だなと。

何より、やると決めたことやチャンスが来たら、フルスイングする。本気でやれば、仮に失敗しても、それは経験になる。


2.本気の人だけを集めた方がうまくいく


「歴史上の戦も勝敗を分けるのは、人数ではなく本気度だったのではないか。・・・本部スタッフを50→30人に減らしても、業務に支障がなかった。」

とのことだった。

やる気のある人とそうでない人がいると、やる気のある人の本気度が下がってしまうという弊害も生まれてしまうので、その通りだなと。

この際、リストラという形ではなく、他への部署移動だったりと色んな選択肢を提示して従業員にオプションを与え、各自に決めてもらうというフローにも共感した。


3.サイエンスを武器にすることがお客さんのためにもなり、結果的に会社としての競争力につながる


新商品を出した際には、本当にそれによって効果があるのか、専門機関を通して検証をしている。これを、本書内では、エビデンスマーケティングと読んでいた。

それをしたことによる数値を出すことによって、単なる宣伝文句になるだけではなく、企業や行政が導入する際の意思決定にも役立っており、実際に多くの実績を残している。

このエビデンスマーケティングをしていなくて、実際に上辺だけの商品を出しているところは、先行者メリットや短期的な価格競争では勝てても、最終的にはスケールできていないとのことであった。



専門用語とかほとんどもなく、全体的に語り口調な感じだったので、とても読みやすかった。

個人的には、今後のウェアラブルデバイスの動向がとても楽しみだなと感じた。



細かい感想


その他、気になったことやメモしておいたことを挙げていきたい。
(本文をそのまま引用したわけではなく、勝手に要約したり解釈しているものも多数含まれる。)


#メガネを作るまでには時間がかかるから、カフェと一体型の店舗にする


ユーザーのニーズと体験まで考えて販売店を最適化する良い例だなと。

#店舗を出す際には、その場所がもつイメージとその店舗が目指すイメージを合わせると効果が高い


銀座に出せば、高級感。原宿や下北沢に出せは若いおしゃれ感。地方の国道沿いに出せば庶民感が出る。
場所によってブランディングするのはなるほどなと。

#メガネやサングラスが合わないと体調が悪くなることがあるように、品質に裏付けのない商品が世の中には多すぎるのではないか。


製造側と購入側では圧倒的な情報の非対称性があるので色んな分野でこれが起きているのだろうな。
製造側が倫理観と誠実さをもって、伝えてくれることは購入側にとってありがたいこと。それが、結果的にブランドへの信頼につながる気がする。

#自社で作ったJINS PCの効果検証をきちんとするために、専門の眼科医に協力を仰いで、統計的に効果を測定する


製品開発の分野において、統計的なアプローチは必須だなと再確認した。消費者が統計リテラシーをもったら、色んなサービスが破綻しそう。

#認知の低いブルーライトの脅威を知ってもらうために、情報感度の高い人達向けに体験イベントを開く


プロダクトの良さを知ってもらうために、まずは、そのプロダクトが解決する問題そのものを知ってもらうっていうアプローチには共感。
人って、自分にとって重要な問題にしか手を打たないだろうから。

#ショッピングセンターに入居している店舗にいらっしゃるお客様の目線を忘れるな。 彼らの目線は、全国区の目線といっても過言でないから。


すごくわかりやすい。これが恐らく正しいであろうことは、統計的にも証明できそう。

#アイディアがない状態で、ブレストをしに専門性の高い人に会いに行く。その際には、その旨を明確に伝えることで、信用してもらえて、新しいことがスタートする。


若い学生なら勢いでいけそうだが、社会人となるとなかなかやりにくいことではあるが。。。が、これをやるくらいのバイタリティが大切なのであろう。

#センシングデバイスとしてのジンズ製品は、守るべき既得権益がないので、イノベーションにフルスイングできる。


既得権益がないってことがある種の競争力になるっていうのは新しい視点だなと。

#日本人の経営能力、ビジネススキルは非常に高い。ただ、英語ができない、チャレンジ精神がないことだけがネックになっている。


確かに。日本人は世界で活躍しにくいって感じで漠然と批判されることはあるけど、その原因を因数分解していくときっとこういうことなんだろうな。逆に言えば、チャンスでもある。

#スタンフォード大学の教室では、先生の話を静かに聞くのではなく、少人数で活発にディスカッションをしている。こうした双方向の学びから起業のアイディアが生まれるのだろう。


今働いている会社では、社員の仲が良く、ちょっとした雑談から真面目なディスカッションにつながることが多い。きっと、そういう環境が大切なのだろう。
それを意図的に、優秀な人たちが全力でやるからこそ、特にスタンフォードは強いのだろうなぁ。

#起業する人たちが周囲に多いと、あいつができるなら私にもできそう、と思えてくるものだ。これは、勘違いかもしれないが、こういう環境は非常に大事。


その通りだと思う。企業に限らず、あることが当たり前の環境において、そのことをするのはかなり容易な気がする。勉強するときに、家より図書館に行った方が集中できるのも同じ理由な気がする。